「占有権」とは、物を事実上支配している状態(占有)に対して、法律上の保護を与える権利のことを指します(民法 第百八十条~)。
たとえば、土地や建物を実際に使用・管理している人には、その状態に基づく一定の法的権利=占有権が認められます。
占有権は、たとえその人がその物の真の所有者でなかったとしても、一定の保護を受けることができる仕組みです。
👉 占有権が認められる理由
これは、占有権が次のような目的で法的に認められているためです。
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自力救済の禁止とのバランスをとるため現代の法律では、勝手に他人の「物(不動産を含む)」を取り戻すこと(自力救済)が原則として禁止されています。
そのため、現にそれを使っている側=占有者をまず法的に保護することで、社会秩序と取引の安定が保たれます。 -
「見た目の権利状態」を重視して取引の安全を守るため占有者は、実際に土地や建物を使用しており第三者からは権利者に見えるため、その見た目を信用して契約などを行う第三者を守るためにも、一定の法的保護が与えられます。
✊ 占有権の成立要件
占有権は、次のような要件を満たすことで成立します。
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自己のためにする意思(占有意思)を持っていること他人の物を預かっているだけのような場合(例:不動産の管理会社など)は、原則として占有権は発生しません。
自分が使う・持つという意思のもとで「物」を支配していることが必要です。
🏠 不動産との関係
占有権は、たとえば以下のような、土地や建物を長年にわたって実際に使用してきた人がいる場面で問題となります。
- 登記上の所有者と異なる人が長年土地を使用していた場合(時効取得との関係)
- 不法占拠者に対して退去請求を行う場合(占有保持の訴え)
このように、不動産をめぐるトラブルでは、「誰が権利を持っているか」よりも「誰が不動産を実際に支配・利用しているか」が重要な判断材料となることがあります。